死の尊厳と死ぬ権利

 今回の記事は物議をかもす内容だと思いますがあくまで私個人の意見であり、気分を害するであろう方にはあらかじめ謝罪させて頂きます。

 今日、ネットニュースのトピックスで橋から身投げをしようとした女性を通りかかった方が助け思いとどまらせたという事で管轄する警察署から感謝状を贈られたという記事を目にしました。実は1週間位前にも同様のニュースを見ていて違和感を覚えたんです。なぜなら私はこれは全くのおせっかいだと思うからです。偽善以外の何物でも無い。勝手に作られた社会のルールや価値観を押し付けてるだけ。正義感の押し売りは止めてもらいたい、と思うんです。それは私がうつになって人の痛みと苦しさに敏感になったから。よりセンシティブに物事を感じるようになったから。

 最近は調子が良いですが、2週間くらい前はどん底にいました。離婚と子供と離された事による喪失感と自己否定。永遠に安らぐ日は来ないんじゃないか、こんなに苦しいなら早く楽になりたい、と毎日いや毎時間、常に考えていました。この苦しさは犯罪被害で親族を亡くした方とかに近いものがあるのかもしれません。幸せな日常から突然の人生の急変。交通事故にでもあったかのようにある日突然、幸せが無くなったんです。それまでは家族のためと思って仕事も休日も私なりに一生懸命頑張ってきたつもりです。でも理不尽にも奪われた。ものすごく苦しくて、辛かった。で、自然に死にたいと考えるようになる。死にたいのでは無くて、逃げたい、ただ楽になりたい。永遠に何も考えなくていいなら、胸の痛みを忘れられるならどんなに楽だろうと。その手段は死しか無いんです。今でもその考えは変わりません。でも積極的に自死を選ぶ事はしません。なぜなら怖いから。ただそれだけ。よく自殺防止サイトに「悲しむ人が必ずいる」「生きていれば死ななくて良かったと思う事が起こる」などと書かれていますが、確かにそれは事実だと思います。でもそんな事より「今」が辛いんです。だって誰も苦しみを代わってくれないでしょ。誰も痛みを共有できないでしょ?末期がんの痛みで苦しんでいる人の痛みを代わりに受けてあげられますか?爆弾で腕がちぎれた人に「痛いのは今だけ。いつか笑える日が来る」なんて無責任な事言えますか?自死を選ぶ人たちはさんざん苦しんで、孤独に痛みに耐えて、ようやく安らぐ手段を手に入れようとしてるんですよ?文字通り死ぬほどの恐怖を乗り越えてまで。理由は人それぞれ。だけど誰もそれを代わってはあげられない。私もそうです。誰かの痛みを代わってあげられない。ようやく安らぎを得ようとした人の勇気に賛辞を送って新たな旅立ちの幸せを祈ってあげたい。思いとどまらせてその後その人が何十年と背負って生きて行く抜け殻みたいな人生を貴方は背負ってあげられるんですか?できないなら余計な手出しはするなと言いたい。そしてそんな人間に賛辞を贈る風潮を辞めて頂きたい。どんな人も幸せに生きる権利とともに自分で自分の人生を終わらせる権利もあると思う。人の権利を勝手に奪って賞賛されるなんて間違ってないですかね?勘違いしてもらいたくないんですが自殺を推奨しているわけではありません。ただ、その手段を選ぶ人は抱えきれない理由があり、自分の権利を自分の意思決定に基づいて行使しようとしているだけ。だから責任がとれない他人が邪魔するなって思うんです。これは私にとって殺人と同罪位に罪深い事なんです。その人の尊厳を奪う。死という尊いものを強奪して無理やり生かす。ふざけるなと言ってやりたい。好きで生まれてきたんじゃないんだからせめて死ぬとき位は自分で決めてもいいじゃない。

 最近は落ち着いてきたのでどん底は脱しました。その頃と比べると確かに外に飲みに行ったり運動したり誰かと話たり楽しいと思う瞬間もあります。でも、長生きしたいとは思わない。今もし致死的な病気にかかったら治療しようとか延命しようとは考えない。今後も絶対に。そしていずれ迎える死の瞬間は心から笑うでしょう。これで未来永劫楽になれる。何も考えなくも済む。「貴方が死にたいと願った今日は誰かが生きたいと願った明日なんだよ」じゃあ俺の寿命の残りどんだけか知らないけど全部あげますよって思う。

 死は生と同じ位尊いもの。厳かなもの。生きる権利と同じくらい死ぬ権利も大切にされるべき。だから誰も奪ってはだめ。静かに旅立ちの行方の幸せを祈ってあげて下さい。それがその人の尊厳を守るという事です。よく自殺サイトなどで見かけますが、あるわけのない死後の世界や霊の話(成仏できない等)などのうさんくさい言葉を並べ立てていたずらに自死を選ぶしかない人を傷つけるのは止めて下さい。自死が唯一の救済、しかも自己完結できる自己救済である人もいる事を知って下さい。

 批判と誤解を恐れずに言います。私は応援はしませんが、そういった人たちの旅立ちを、行く先を祈ります。少しでも苦痛が少なく、恐怖が少なく、安らかでありますように。そして永遠の安らぎに満たされますように。